触れていたい、からだ
〜ちょっとオトナな獅子乙女7連作〜
少しでも離れたら死んでしまうって、そう思った。
俺が抱いていないと、こいつはどこかに独りで行ってしまうって、そう思った。
「体を繋ぐのは、安心しておくため?」
否、こうしていると幸せだから、ずっと触れていたいんだ。
01 渇き切った双眸
出不精の恋人を口説き落として,やっとこさ海に連れ出した。
波に洗われる、白く伸びた脛に繋がる、細い足首。
海風に泳ぐ金色の髪、長く長く。
誘うように向けられる視線。遮る水飛沫。
塩の味がする。
…瞬きもせず…
「どうした、リア、そのような赤い眼をして…」
お前が,欲しい。
その体を舐め回して、食らいたい。
こっそり、潮に濡れた長い髪の毛先を食んで、そう思った。
「陽に、当たりすぎたかもしれない」
体を、冷まさなければ。
浅い海を、もっと深くまで。
独りで進んでいく。
「待ちたまえ」
乙女座が背中を引き止めた。
…渇き切った双眸を欲望の波がさらって…
02 やさしい指
触れられて、初めて知った。
挿し入れられる指の感触。
からだの奥を探る、長い指。
性急に慣らそうと動く、無骨な指。
「リア…」
押し入ってくる君は、片手で腰を攫み、片手で私の性器に触れる。
不器用な手で、触れる。
その手はやさしい。
「出るっ…」
飛び出した白い粘液を私の口元に運ぶ、指。
口のなかに挿し入れられるその指を、軽く噛んだ。
「…ッ、シャカ、痛っ」
声を上げると同時に私のなかに放たれる、君の体液の感触。
「痛かったかね?」
罪滅ぼしのつもりで、噛んだ部分を舐める。
君の、節ばった長い指。
無骨で、不器用で、そしてやさしい指。
03 濡れた頬
初めてのとき、痛みで濡れた頬を優しく拭ってくれた。
その手で無理矢理に頭を攫み、喉に肉棒を突いて。
滲む涙と、顔に吐き出された白濁で濡れた頬。
舐めとる舌。
ごめんねと髪を梳く同じ指。
融け合う体の熱と暑さで、朦朧となる。
抱かれたいからだを有無を言わせず抱く、金茶の巻き毛から汗が滴り落ちて私の頬を濡らす。
…ああ
04 歪んだくちびる
君の顔が好きなのだ。
必死に堪えて、声を殺して、そうして果ててゆく。
君の、歪んだくちびるが。
05 影落とす睫
じっと見ている。
撓る白い背中を。
割り開かれる双丘を。
挿し込まれる自分自身を。
痛みに身を捩らせる、繋がれた相手を。
じっと見ている。
背中越しに、君が、四つん這いにされたこの躯を、見つめるのを。
眼を閉じていても分かるのだよ。
君の、真剣な眼差しも。
影落とす睫も。
06 淋しい背中
「まるで、盛りのついた猫だな」
と、デスマスクは笑った。教皇宮の更衣室での出来事。
「日がな一日乳繰り合ってるんだろう?」
ほとんどその通りなので、言い返せない。
「……」
アイオリアは、「盛りのついた猫」という言葉にへこまされて,とぼとぼと帰路についた。
「……」
夏前から処女宮に居着いたままの獅子は、今日だけ獅子宮に戻るのも不自然で出来かねて、そのまま処女宮に、但し、幼馴染みに背を向けて、寝ていた。
(不名誉なレッテルを、払拭しなければ…)
堅い意思を裏切って固くなってしまう、自分のものを悲しく股間に感じながら、悶々としてしまう、真夏の夜更け。
「…うっ…」
突然、汗ばむTシャツ越しに背中をなぞられて、獅子はびくりと躯を震わせた。
「シャカ…?」
静かなので、寝てしまったとばかり思っていた恋人を呼ばう。
「まだ、寝ていなかったのか?」
背中をなぞられて感じてしまったせいで、ますます股間が元気になった獅子は、未だ恋人に背を向けたままだ。
「リア、こっちを向きたまえよ」
シャカは欠伸を噛み殺しながら、獅子を諭すように云った。
「…駄目なんだ」
アイオリアはしどろもどろに誘惑に抗った。
「…そうか。ならば仕方がないが…」
ふぁ、と、背中でシャカが欠伸をする気配がした。
「こんなに背中ばかり見せられては、淋しいではないか」
アイオリアは、徐に、寝返りを打った。
…盛りのついた猫、か…
…上等だ…
07 振り解けない手
夏に煽られて火が点いた、欲望のままに抱き合って、夏の終わりを迎える。
季節の終わりとともに収束を見せる肉慾。
お互いの汗に塗れてつながりを求めた日々の終わり。
…「ひと夏の恋」とは、良く云ったものだ…
「リア、行くのかね?」
何となくあいつんちに居座り続けるのも居づらい気がして、荷物をまとめている俺を、あいつが呼ぶ。
「ああ、一回家に戻って来るよ」
残念ながら呼び止められるわけじゃないが、閉じたままの瞳は、眉間に薄く皺を寄せていた。
処女宮の玄関から階に向かうところ。
「……」
現実に帰らなければ。夏は終わるんだから。名も呼ばず無言で、見送る、幼馴染みを振り返る。
……
折角まとめた荷物を放り出して、秋風にそよぐ金の髪をかき抱く。
無言で、ひしとしがみついてくる幼馴染みの華奢な指は、力強くて。
「…なあ、もう俺たち独りじゃ立てないのかな?」
夏を過ぎても、振り解きたくない手。
「どうしてそんなに私に触るのかね?」
そう訊ねると獅子は、拗ねて、情けない顔をした。
「厭なら、やめるよ」
今にも泣き出しそうな獅子は、捨てられた猫のようで。
思わずその頬に触れて、抱きしめたいと思うのだ。
Reiです。
獅子乙女夏祭り開催おめでとうございます。
ちょいオトナ、と言っておきながら、あまりエロくなくて申し訳ないです。
わたしにはどうやらこの程度が限界のようです。。
主催者のG2さま、読んでくださった方々、ありがとうございました。
空詩さまより
「身体の部分で七題」をお借りしました。
2007/9/6 Rei @ Identikal