En prierement


願い事








血を分けた分身を捨てて飛び出した

俺は決して

お前が疎ましかった訳じゃない


胎内を出るときのようにただ

自由が欲しかった








  眠れぬ夜にも、星の光があなたを照らしてくれますように



傍に居られない俺が云うことじゃないと

分かっている

けれども

眠れない夜に鏡を見つめる度

お前を憶い出すんだ


この、遠い海の底から






  我慢しきれずに零れるのは、明るい笑い声でありますように



否、私が祈らなくてもきっと

お前は

今も笑っているだろう


同じ遺伝子を持っているはずなのに

私にはない

しなやかな強さがある


そんなお前が愛しくて

とても厭わしい







  愛おしく思う気持ちのままに、あなたを愛せますように



遥かな海面に

夏の陽射しがきらきらと

照り映えていた


そんな見慣れているはずの

海底の景色を

お前に見せたいと

ふと

想った






  傲慢な本音を隠すわたしを、あなたが嫌悪しませんように



「私の傍に居られないのならいっそ

死んでしまえば良い」

ともう一人の自分が云う


お前は

仕様のない奴だと

笑ってくれるだろうか








  年を重ねてゆくあなたを、ずっと傍で見ていられますように



こんなに遠い場所で

そんな虫が良いことは口が裂けても云えないと

自嘲気味に微笑って


鏡のなかの

自分の姿を見た










傍に居たいと思っていただけなのに

いつの間にか

お前を閉じ込めてしまった


鏡のなかから逃げ出したお前の幸せを

どうか、祈れますように












2010/06/10, Rei @ Identikal












拙宅のカノンは聖戦後聖域に生き返った後、海底に向かいました。というお話です。

双子ちゃん、お誕生日おめでとうございます。これからもわたしに、生きる力をください。



「願い事」お題元:"as far as I know"さまよりお借りしました。



わたしが、こっそり祈っている五つのこと。

..あなたの夜が優しいといい。/ ...にがい嗚咽などでなく。/ ...大事な人だから大事にしたい。/ ...この恋は凶暴で。/ ...(あなたもわたしをみていてくれますように)。/