世界はここにある



せ 星座盤の宇宙



俺たちの日常は所詮

ちっぽけな星座盤の宇宙


どこにいても何をしていてもこのなかでは

あなたを思い出してしまう





か カステラを切るから


「カステラを切るから帰っておいで」

と言って母が

外に出たきりの俺たち兄弟を呼びにくる

そんな幼い想い出には無縁でも

不幸せではなかったよ





い 嫌味なやつ



「嫌みなやつ」

なんて云われたらあの人

大喜びするだろうな





は 走って帰らなきゃ



「帰るぞ、アイオリア」


急ぐ理由がある訳でもないのに

走り出すあなたの背中を追いかけたあの日を

今も昨日のことのように思い出すんだ





こ こころ



「ねえ兄さん、こころはどこにあるの」


しばらく考えて、彼は云った


「いずれお前にもわかる日が来るよ」


そうだね、わかるよ兄さん

あなたを憶うときに痛む、ここにこころがあるんでしょう?





こ 言葉にならない


もう一度あなたに逢えたら

一体

どんな言葉が出てくるのだろう?





に 日曜日は好き?



嫌いだよ


礼拝に向かう家族連れをみるといつも

自分がなくしたものを

憶い出すから





あ あったかい左手



「兄さん、とっても字が書きにくそう」

「そんなことないさ」

文字を綴る手を止めた兄が

俺の頬に触れる


「ほら」


器用にくすぐられて思わず微笑んだ


兄の左手のぬくもり





る 留守にしてても



「ちょっと出掛けてくる」

そう言ってただ出掛けているだけみたいなのにもう

十三年も経つんだな


「お前もう大人なんだから、俺が留守にしてても平気だろう?」

ってあなたは言うかもしれないけど


ねえ

もう帰ってきてよ








Reiです。珍しく射手獅子兄弟で作ってみました。

お題のafaikさま(http://homepage3.nifty.com/azoth/f/)よりタイトルをお借りしました。


大層なタイトルのわりに、中身はささやかなものばかりですね(笑)

せ...星座盤って青くて透明でくるくる回って好きでした。/ か...カステラ切るから上がってかない?口実かきっかけか。/ こ...こころ、はあの有名な小説のタイトルでもだれかの心でも。/ る...留守にしてても勝手に上がっちゃっていいよ。"か"と対な感じで作ってみました。